北京の「あの」遊園地に行きました
4月28日から30日、2泊で北京に行きました。メインの目的はサッカー観戦ですけど、その件は過去の記事を見てください。
その試合も到着日の28日に終了し、翌29日は一日ふらふらする日にしていたのですが。
4月29日の北京駅です。駅前はいつも人が一杯です。
※中国では発車時間近くにならないと、駅構内に入ることができません。
でも乗ったのは地下鉄。北京駅前を通る2号線から
「復興門駅」で北京中心部を真っ直ぐ横断する1号線に乗り換えて、合計40分ほどで
北京郊外の「八角遊楽園駅」駅に到着しました。いえ駅名の「八角遊楽園」は今回の行き先とは別に在るようです、目的地はそちらではありません。ちなみに北京の地下鉄はどこまで乗っても2元(約30円)です。
陸上に上がって、更にてくてく歩いたその先に。
目の前に現れたのは……
『石景山遊楽園』。北京随一の「遊園地」です。
というか要するに、北京オリンピックの時に有名になった、いわゆる「パクリ遊園地」です。
まず前提として私のスタンスを明示しますと、このブログを見ていただいている方には判るとおりでディズニーランドも好きで、ロサンゼルスのアナハイム在る「本家」ディズニーランドにも、パリのディズニーランドパリにも行ったことがあり、特にフロリダのディズニーワールドは「第二の祖国」の気分でもう何度も「帰っている」身です。ですが私自身はディズニー原理主義者ではなく「遊園地も大好きなボク」である私です、多少のパクリだなんだとかでは動じません。なんせ日本には、正面切って某ディズニーランドを真っ向からパクろうとした「奈良ドリームランド」が在ったのですから。
ましてやここは中国、そんな国際世界の常識が通用するわけもありません。
ただ、私の興味を引いたのは、コレです。コレがあることに気がついたからこそ、ここに来る気になったのです。
真ん中に見える球体の建物に注目してください。その上で、次の写真をご覧ください。
08/09/20
これです。「一見」そっくりですね。
05/07/11
下に示したこの『球』は、フロリダ・ウォルトディズニーワールド(以降WDWと表記)内のテーマパークの一つ、「エプコット」のランドマークとなるパビリオン「スペースシップ・アース」です。球の直径は50m、世界最大級の完全球形ビルディングと聞いたことがあります。
疑う余地もないでしょう、石景山遊楽園の「この球形のビル」は明らかにエプコットのスペースシップアースを意識してデザインされています。元よりこの遊園地、「パクリ」と騒がれただけ在ってその中心部に据えられているランドマークたる建物がアレ(後述)ですから、他にパクリが在っても不思議ではありません。
ただそのパクリも「ディズニーランドにしても本家アハナイムだけでなくフロリダも研究している」つまり結構深い処まで研究しているのではないかと思ったのです。ならばそれがどこまでやっているのか、自分の目で見定めてやりましょう。だから、現地まで行きました。
パクリの件で、この遊園地についての記事もここまでにあちこちで見かけましたが、しかしそれらの記事では皆「そういうテーマパーク系の知識が薄く」、キャラクタだけならまだしもアトラクションなどについても名称など表面的なネタに終始して居るように思えました。ですから私が書きます。ディズニーランドマニアの端くれの目で見た、中国のパクリ遊園地のレポートです。
より大きな地図で 石景山遊楽園 を表示
ちなみに入場料は大人10元(約160円)。
あ、今気が付いたけど園内マップは2元で売られていたのか。
取り敢えず朝10時くらいでしたけど、人気は少なかったです。
自転車や車、ローラースケート、ペットや爆竹は持ち込み禁止です。爆竹禁止を明示するところが中国らしいですね。
……左下の『蝶みたいなの』は何を持ち込むなと言ってるのだろうか?
これが全体図です。右側が先程の表玄関、右上方向に地下鉄駅が存在します。大きく二つのブロックに別れていますが、その辺はこの後折に触れて紹介していきます。
面積的には狭くも広くもない、普通の郊外の遊園地という感じです。何もない空き部分も広かったですけど。
さて、ゲートを潜って最初の目にしたのは……殺風景な階段、というか段差。
真ん中を滑るのは禁止です。というか入って見える最初の文字が「禁止」ですか。
そしてその奧には旅客中心"TOURIST CENTER"。おそらくはゲストサービスかインフォメーションに相当するのでしょうけど……閉鎖されてました。入場早々暗澹なる気持ちにさせるには十分です。
僅かな人の流れが右方向に向いていましたので着いていくと、キャラクタのお出迎えが。動きませんけど。
「パクリ遊園地」としてこの遊園地が名を馳せたのは、ここでは「どこかで見たような」マスコットがわんさかと居たという事が元凶なのではありますが、問題となった結果として(権利元からも正式に苦情が行ったとか)今ではそういう「キャラクタ」は排除されているようです(私が見回した範囲では。見てないところで何が起きているのかは知らない)。なので今では(冴えない)キャラクタが居るのみ。いえ、冴えなくともこれはいちおうオリジナルキャラだそうですけど。あか抜けないマスコットは、田舎の遊園地の基本です。
遊園地ですからには、アトラクションも多数有ります。中国で一番「アトラクションが多い」遊園地だという表示も園内どこかで見た記憶があります。これは
ラフト(筏)ライドのようですね。
ライドなどのアトラクションについては日本の『泉陽興業』が手掛けているそうですから、乗り物自体(のベースは)けっこうしっかり造られています。とは言っても、泉陽興業はあの大阪の「エキスポランド」の会社、しかもここは中国。恐怖の二乗で、ライドは何の信用もできません。
という何よりも生命第一の理由で、今回のレポートではライドには一切乗っていません。
※先程の入場料にはライド代が含まれて無く、ライドに乗るためにはそれぞれの近場に設置されているキオスクで個別に購入する必要がある(10元~50元)しかも手売りてのも敷居を高くしていましたけども。
あ、コースターが在りました。
……これは「ビッグサンダーマウンテン」のつもりみたいです。まぁこういう程度の「もどき」コースター自体は日本の地方の遊園地にもよく在りますね。目くじらを立てるほどでもありません、というかいちいち反応してたらきりがない。
さて、私が気になったこの建物は……近づくとエプコットのスペースシップアースとは「似ても似つかない」代物でした。
しかしこのアトラクション「飛翔」は
どうやら、リフト型の座席に座って、ドームスクリーンで空中滑降をしている気分で映像を見ることができるというアトラクションのようです。
ここまで書くと「その筋の人」にはピンが来ます、本家アナハイムでは第2パークのカリフォルニアアドベンチャーに、そしてフロリダWDWではエプコットに在るアトラクション、「ソアリン’(オーバーカルフォルニア)」の中国映像版ということです!
いやいや、だからと言ってパクリと決め付けてはいけません。ディズニーの「ソアリン’」自体、ハードウエアはディズニーのオリジナルでは在りませんから。元よりこのシステムは本来は、あの幻の「都市博」で世界初公開されるはずだったものなのです。
(もちろんディズニー自体は正規にシステムを購入した上でアトラクションに利用しているのでしょうけど、ならば同じシステムを中国の遊園地が使っていても問題は有りません、まぁまったく別物で独自のシステムの可能性はありますけどね。だからこれも「恐くて」乗ることできませんでした)
ちなみに隣は「美洲探検」"AMERICAN ADVENTURE"。
その隣は鹿国です。……アトラクションの配列とか一貫性などは気にしてはいけません。
さて。この遊園地は真ん中に陸橋が在ります。これは先に示した地図を見直していただけると判りますが
敷地内を線路が横断しているためです。(人が歩いていましたけど)
この陸橋から見える風景自体もどうかとは思いますけど、これも一々気にしていたらきりがない。
なんせ陸橋自体がこの状態ですから。
陸橋を渡ると、ついにこの遊園地の核心です
その前に、ゲームセンターに。
なんか思いっきり日本語が表示されている上に、「日本国内でしか使用できない」と画面上にはっきり明示されていた一世代も二世代も前のゲームが並んでいたような気もしますけど、それは気のせいでしょう。
さて記事も核心に差し掛かりました。この遊園地の中心にして「パクリ」の象徴ともされている「お城」です。これは判りやすいので過去の記事でも掲示されていることが多いですね。
08/09/18
念のための参考として、フロリダWDWのディズニーランド相当のテーマパークである「マジックキングダム」のお城「シンデレラ城」です。ちなみにこのシンデレラ城は舞浜の東京のお城と同じと考えて差し支えありません。
まぁ、比較しろと言う方が無体ですね。
お城の前の像も「何だかよく判りません」。舞浜でお城の近くに見かけた白雪姫の像に見えなくも……ない。いやいや。
なおお城の後ろ側はこんなに平面的で、お城自体「書き割り」に近かったです。工事中で中には入れませんでしたけど。とにかく中心部に「お城を建てたかった」という、デザイナの勢いだけは感じました。テーマパークには象徴となる建物を中心に据えるのは、ことディズニーテーマパークでは基本です。そしてこの遊園地でも、そういうパークデザインの基本を忠実に再現しようとしたのでしょう。
(深く考えていない可能性などは、この際は考慮しません。あくまでこの遊園地のデザイナは考えてやっている
「だろう」という前提で考察を押し進めていますから)
なお前の池の水深は0.8mで、注意が必要です。
(と書いておかないと泳ぎ始める人が出たりするのだろうか。とも考えましたけど、しかしここは中国だから何をする人が現れてもおかしくはありません)
あ、[王京]斯探検、別名"JONES ADVENTURE"。これはもしかするとアレなのか!
アレなのか! って言うかなんというか。
見た目どっちかというと、アレというよりはスプラッシュ・マウンテン的なライドでした。要するにどこが「ジョーンズ」やねん。
過去の報道などでは「ディズニーの雰囲気を備えた」という惹句も掲げられていたみたいですのに、全然「ディズニーの雰囲気を備え」ているようには見えません。何故か壁には海賊がへばりついていましたし。
更に奥に進んでいると、見た目新しめの塔に目が行きました。
近づいてみると、これは「冒険塔」なるアトラクションらしい。
外から見た状況から推測するに、いわゆる「スペースショット」(椅子に固定された上で急上昇や急降下するアトラクション)を壁で囲っているようです。つまり真っ暗の中で急上昇&急降下。スペースショット自体は目新しくありませんが、それをダークライドにしてしまっている点では独創的というか、私自身はココ以外で見たことはありません。
もちろんこのアトラクション自体は、ディズニーの「タワー・オブ・テラー」を意識しているのでしょう。タワーオブテラー自体はスペースショット型ではないものの、動き的には近いです。
つまりはこの「冒険塔」というアトラクションは「タワーオブテラーみたいなのを造りたい」と考えた上で、比較的金額を抑えた形を模索した結果ではないだろうか、と推測できます。
まぁマネをするにしてもまず第一に「そんなに予算はない」という処はそこかしこで見えましたけどね。
この辺は舞浜の海の方をコピーしようとする意図はわかりますが、いかんせん「残念」な状態です。
そして遊園地の奧まで行くと……工事中でした。地図で見る限りでは駐車場のはずなのですけど。
まぁこういうところは「中国ですからしょうがない」とだけ書いておきます。
さて、
実はこの遊園地で私が一番驚きかつ感動したのは、この物体↓です。
ロケットのオブジェです。何気なく建っているコレが何かというと……
まず以下のリンク先を参照してください。
http://images.search.yahoo.com/search/images;_ylt=A0S020qOcvtLUGQAqT.JzbkF?p=%22twa+rocket+to+the+moon%22&fr=yfp-t-701-s&ei=utf-8&x=wrt&y=Search
Rocket to the Moon
つまりこれは、本家ディズニーランドに建っているロケットのオブジェを「そのまま」コピーしてこの北京の遊園地に建てているのです!
隣が「宇宙旅行」との名前が付いているからにはそういうアトラクション(のつもり)なのでしょう、だからこの遊園地をデザインした人は、意識してここにロケットのオブジェを建てたのだと推測できます。
これは、このパークのデザイナーがディズニーランドをパクるにしても、それなりに本家を調査した上だということが見えますし、また「可能な範囲で」は積極的にコピーしようという前向きな姿勢を感じました。
表面をなぞるにしても、それはただ「表面をなぞっている」だけではないのです。
まぁ表面をなぞっているのですけど。
研究の過程が見えるという意味では、このオブジェも興味深いです。
恐らくはこれは、元ネタは↓コレでしょう。
http://search.nifty.com/imagesearch/search?select=1&cflg=%B8%A1%BA%F7&q=%22%50%6F%73%65%69%64%6F%6E%27%73%20%54%72%69%64%65%6E%74%22%20%22%69%73%6C%61%6E%64%73%20%6F%66%20%61%64%76%65%6E%74%75%72%65%22&ss=up
Poseidon's Trident
元ネタとして示したオブジェは、これはフロリダのユニバーサルの第2パーク「アイランズ・オブ・アドベンチャー」に建っています。つまりこの遊園地のデザイナは、ディズニーだけでなくユニバーサルスタジオも研究しているのです!
それにしても、パクりにしてもそのままではなくトライデント(三叉矛)の上下を入れ替えているのはなにかのこだわりなのでしょうかね?
まぁユニバーサルネタとしては、もっと『露骨な』こういうのもありましたけど。
ちなみに口元は痛々しかったです。
ここに限らない話ですが、テーマパークや遊園地という代物は造ることよりも維持することの方が大変です。
中国だから仕方ないというか、スリルライドのメンテナンスなどまでもこんな調子ではないかと想像できるだけに、恐ろしいです。
今回の記事もそろそろ終わりです。
最後に園内のお店に入ってみました。以前は園内で海賊版ビデオなども売られていたそうですが、そういうのも全然見かけなかったです。日本のキャラクタグッズなども売られていましたが、それは法的に問題のない物みたい(詳細不明)。
ということで、来た記念にこの遊園地のオリジナルキャラ、大耳猫のぬいぐるみを買いました(15元)。
アトラクションに乗らなかったこともあってそんなに時間も掛からず一回りを終え、3時間ほどでこの遊園地を出ました。
まぁ乗らなかった事自体は心残りが無いわけではありませんけども、それはそれということで。何より命が惜しいですから。
まとめ:
文中でも言及している「奈良ドリームランド」ですが、こここそ私は「ディズニーパークマニアの目から奈良ドリームランドがどこまで似せていて似ていないのか検証スル」という記事を書くことを考えていました。しかし構想をを抱えて奈良に行く機会を窺っているうちに2006年8月31日、奈良ドリームランドは閉園しその記事を書く機会は永遠に失われてしまいました。今回の記事はそのリベンジというか補填というか、そういう局面もあります。自分にとっては。それはそれ。
パクリで一躍名を馳せた『石景山遊楽園』も、その最大の特徴であったはずの「パクリ」が大きく削られると、『デ』と比較するのもおこがましい「田舎の遊園地」となってしまっていました。ならば何と比較すればいいのかという事については、私が今まで行ったことがある日本の遊園地で適切な比較対象を考えたところ、大分県は別府の「ラクテンチ」となりました。『田舎の遊園地』という雰囲気が近いと感じましたから。いや、アトラクションが無体に充実していることを考えると、福岡は大牟田の「グリーンランド」かも知れません。
それでも、この遊園地自体はパクるにしても「偉大な遊園地」を研究した結果として造られていることは透けて見えました。余所の遊園地やそのアトラクションを参考にすること自体は、ディズニーもユニバーサルもやっていることです、それ自体は恥ずべき事ではありません。その上で独自性を出せばいいのですから。
(この遊園地ならではの独自性が何処にあったのかは判りませんでしたけど)
ただ気になるのは中国政府は、ディズニーランドにしてもユニバーサルスタジオにしても大陸内への誘致を積極的に進めていることです。今後北京近郊にも外国の大型遊園地・テーマパークが進出することになるでしょう。その時に石景山遊楽園は生き残ることができるのか。この遊園地が今後どうなるか、その行方を見守っていきたいと思います(生温い視線で、ですけどね)。

おまけ:パクリの残骸。
次回は「北京の中心で数百人以上の中国公安に取り囲まれ危機一髪」お楽しみに。
いちおワールドカップが終わる前には更新する思います。
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